とある化学の超ガテン系

実験嫌いの実験化学者が綴る企業の研究員の日常 (このブログはMac OS Xに最適化されています)




Saturday, March 21, 2009

Pepper Aroma in Shiraz

こんな文献を読んでみました↓

Identification and Quantification of a Maker Compound for Pepper Aroma and Flavor in Shiraz Grape Berries by Combination of Chemometrics and Gas Chromatography-Mass Spectrometry
J. Agric. Food Chem. 2007, 55, 5948-5955.

Shiraz (Syrah, Hermitage)はオーストラリアを代表する赤ワインのブドウ品種、コンキチはイエローテイルのシラーズを愛飲しています。

ちなみに過去のオーストラリアのシラーズの成分とか官能評価に関する研究はこちら↓
1) Proceedings 5th International Flavor Conference, Porta Karras, Chalkidiki, Greece, July 1-3, 1987; Charalambous, G. Ed.; Elsevsier: Amsterdam, 1988.
2) Actualites Oenologiques 1989, Comptes rendus du 4S symposium d' oenologie, Bordeaux, France, June 15-17, 1989; Ribereau-Gayon, P., Lonvaud, A., Eds.; Dunod: Paris, 1989; pp 94-97.
3) Aust. N. Z. Wine Ind, J. 1990, 5, 315-319.
4) Proceedings 7th Australian Wine Industry Technical Conference. Adelaide, Australia, August 13-17, 1989; Williams P. J., Davidson, D. M. Lee, T. H., Eds.; Australian Industrial Publishers: Adelaide, Australia, 1990; pp 117-120.
5) Am. J. Enol. Vitic. 1991, 42, 167-174.
6) Proceedings 9th Australian Wine Industry Technical Conference, Adelaide, Australia, July 16-19, 1996; Stockley, C. S., Sas, A. N., Johnstone, R. S., Lee, T. H., Rds.; Winetitles: Adelaide, Australia, 1996; pp 105-108.
7) Aust. J. Grape Wine Res. 2000, 6, 141-149.
8) Australian Vignerons, July/August, 2004, pp 17-21.


で、いくつかのオーストラリア産ワインは独特の好ましいblack pepper様のアロマとフレーバーを有しています。

(一般的に?)興味深い化合物は果肉よりも果皮に集中していると言われているらしく、Brifhtmanがスキンコンタクト有りと無しで造ったワインを比較したところblack pepper様のアロマに関して違いはなかったといいます。この実験はlow pepperなブドウで試したらしく、この結果から著者らは、ワインのアロマとして重要な他の多くの化合物とは異なり、black pepper化合物ははじめからhigh pepperなブドウに存在しており、発酵のみがblack pepper様香気の形成に関与することはないと推察しています。

ちなみに、シラーズのペッパー様香気成分は同定されておらず、ブドウのペッパー様香気を評価する上で客観性の高い分析法もないとか。

ということで、著者らのやった仕事です↓
a) 数多くのpepperyなブドウを特定し、かつ標的化合物の揮発性を決定するための官能試験をデザイン
b) 標的を定めずに、GC-MS分析で全ての揮発成分を捕集するための静的ヘッドスペース法を開発
c) GC-MS分析のデータを多変量解析することで、pepper/spicyアロマに関連する要因を明らかにし、GC-MSデータを基にしたpepperアロマの強度を予測するモデルを開発


で、お仕事の成果です↓

a) 南オーストラリア州とビクトリア州の12のブドウ園から、2002年と2003年のヴィンテージの潜在的にspicy/pepperyなブドウを採取して得た18のサンプルを官能評価したところ、peper様アロマはgreen, grassy, raisinから独立していた。

b) ペッパーアロマの強度と味覚として認知されるペッパーフレーバーとの間に強い相関がみられた。

c) ブドウの抽出のをstatic HS-GC-MS分析から、地域とヴィンテージ間でクロマトグラムに明確な差異が確認された。

d) 1つのブドウの抽出液サンプル当たり13,000にも及ぶMSスペクトルを多変量解析(主成分分析と部分最小二乗法)し、peppernessを予測するモデルを開発した(R2>0.98)。

e) peepperyなブドウ園からは一貫してpepperyなワインが出来る。特に涼しい年に。

f) α-ylangeneがペッパーアロマの有用なマーカーであることを見いだした。但し、α-ylangene自体に強いspicy/pepperyな香気はない。

g) pepperyなシラーズワイン中から検出された主なテルペノイド(28化合物)のうち、spicyやpepperyなアロマを発する化合物は無かった。また、α-ylangeneの含有量が最も多かった。

h) α-ylangeneを定量法を確立し、α-ylangeneがpepperアロマとフレーバーのインジケーターとなることを見いだした(R2=0.65; これでも多変量解析を利用したものを除いて一番まし)。
•最もpepperyなワイン(α-ylangene濃度10-15μg/Kg)→α-ylangeneは良好なインジケーターとなる
•中程度から低いpepperyレベルのワイン→α-ylangeneは常に良好なインジケーターとなるわけではない。

i) HS-SPME-GC-MS (Headspace Solid-Phase Microextraction Gas Chromatography-Mass Spectrometry)でpepperyワインを分析してみたら、α-ylangeneは検出されなかった(検出限界は0.2 μg/L)
→spicy/pepperyアロマやフレーバーを持つ化合物はワイン中に存在する。
ブドウ中に含まれるα-ylangeneが、ワインのpepperyな特性を予測するのに有効。


で、結局のところShirazワインのpepper様の香気成分は不明のままです。今後の分析技術の発展と研究成果に期待といったところですかね?

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