2016年5月1日日曜日

シャープ、凋落は必然か

念願の柏の竹やぶに新蕎麦を食べに行ったときのメモです↓



-竹やぶ 柏本店-
そば粉は黒姫高原の契約農家から仕入れ、石臼で引いたもの。田舎せいろは、毎日殻付の玄蕎麦を石臼で手挽きしているそうです。

-せいろそば (1,080 JPY)-
-汁なしそば (864 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
柏の竹やぶは11月から新そば(写真は新そばね)。蕎麦は野趣溢れる香りが凄い(以前食べた浅草の大黒屋の蕎麦に酷似した香り)。それから、woody noteも感じる。
角が立っている感じは全くせず、とても柔らかい蕎麦。細くもなく太くもなく、上野藪そば総本店のお土産の乾麺に酷似した食感。で、口の中で噛みはじめると弾力が楽しい(これは凄い)。噛むほどに穀物様の良い味が染み出てくる。そして、僅かに胡桃の香味がする。ラーメンのモチモチなんかよりもっと上品で繊細なモチモチ感で噛むのが楽しくなる蕎麦。
ツユはほんのり鰹節の香りが漂い、上品でbodyの強そうな甘•辛さを想起させる香り。味はbodyの強い甘辛でシックな味でボクの好み。力強い辛さに加えて、それと等価の甘さも兼ね備えていて良い。
そして、蕎麦とツユがめちゃくちゃ良く合う。蕎麦の楽しさと、ツユの旨さのシナジーを感じる。ちょっと驚くほどの相性の良さだ。

-生ビール (648 JPY)-
-RATING- ★☆☆
-REVIEW-
サイズはグラス。率直に言ってイマイチ。キリンだろうか?米やコーン、スターチとかが入ってそうな味。ちょっと貧相な香味とbody。温度も微妙に冷えていない。
(今回だけのことと期待したい)

この日の阿部孝雄さんはブルージーンズにボーダーTシャツという出で立ちで、厨房には入っていませんでした(厨房に居たのは次男か?)。


閑話休題


東芝が不適切会計という名の粉飾決算の発覚から大きく揺れていますが、それに負けず劣らす迷走を続けているのがシャープの経営です。先日、中央大の竹内先生の書いた「10年後、生き残る理系の条件」の読書感想文を書きましたが、今回はシャープについて書かれた「シャープ崩壊 ―名門企業を壊したのは誰か」の感想をメモしてみようと思います。


シャープと言えば、シャープペンシルを発明いた会社として有名かと思いますが、液晶事業が大当たりして「液晶のシャープ」と言われるようになるまではソニーやパナソニックの後塵を拝する1.5流の家電メーカーというのがボクの印象です。
しかしながら、液晶テレビ以外にも、電卓(1964年)、オーブンレンジなど世界初の製品を世に送り出してきた企業だったりしています。米電気電子学会(IEEE)から技術分野の歴史的な業績をたたえる「IEEEマイルストーン」に電卓、太陽電池、14インチ液晶モニターの3つの製品が選ばれていて、この賞を3度も受賞するのは日本企業として初めての快挙だそうです。
シャープは、世間(ていうかボク)のブランドイメージとは裏腹に、技術力、研究開発力を元来備えていた会社だったようです(液晶ビューカム(1992年)やヘルシオといったヒットもとばしてるし)。
さらに財務基盤も盤石でした(過去形だけど)。シャープの財務体質は、第二次世界大戦後の一時期を除けば健全で、無借金経営が続いていて、90年代前半の自己資本比率はおよそ50%。財務指標は極めて優良です。

それでは、技術もあり財務基盤も盤石なシャープの凋落を招いたのは何だったのかっていうことですが、それはシャープのブランド力を世に周知させた液晶事業への過剰投資が発端でした。町田社長(4代目社長)時代の亀山工場への投資もかなり大きな投資でしたが、片山社長(5代目社長)時代の堺工場への超巨額投資の失敗、その後の社内の権力抗争とそれに伴う戦略なき経営によって、シャープは抜き差しならない状態に陥っていきます。
具体的には2009年に堺工場が稼働するも、地デジ特需の終焉と円高が相まって、2011年には液晶事業の収益が悪化し、2012年には巨額の赤字を計上して経営陣は引責辞任。リーダーシップのない軽い御輿を社長を祀り上げ、院政の覇権を争う内向きの権力闘争に夢中になり、危機を脱する為の貴重な時間を無駄に浪費してしまいました。
正直アホ過ぎます。国策による地デジ特需は利益の先喰いだってことはまともな知能がれば誰だってすぐ分かるのに、液晶パネル(テレビ)に集中投資してしまった愚は弁解のしようがないと思います(「液晶の次も液晶です」とか言ってたし)。あっ、ちなみに日本からのテレビの輸出は1985年以降は微々たるものだったようです。

ついでに地デジ特需の折、パネル受給が逼迫するなかで、自社製テレビへの供給を優先し、外販に回すパネルの量を制限してソニーや東芝を激怒させたという、どこの途上国よという感じの振る舞いにはあきれて何も言えません。取引先より会社の都合を優先し、商談中でも上司から呼び出しがあると席を立つのも半ば常識というエキセントリックな社風で、下請け企業に対しては執拗に部品の値下げを迫り、横柄な態度で接するシャープの悪評は、地元の関西地域ではよく知られていたそうで、取引先を「おまえ」呼ばわりし、怒鳴り散らすのは当たり前という「下請けいじめ」の常連だったようです(下請法に抵触しないのか?)。これが一部上場企業のすることかと思うとガッカリです(なので、経営危機に陥っても内資系企業はどこも助けてくれなかった)。

こんなあきれた社風を改善するためか、高橋社長(7代目社長)は社長就任早々に過去の権力者達と決別し、権力を社長に集中させて、ホンダのワイガヤを模倣しり、「さん」付け運動等を実施して企業風土改革をはかりました(このご時世で「さん」付け運動始めるとか、どんだけ社内風土が周回遅れしてるんだよって思います)。しかしながら、業績がちょっと回復すると危機感が喪失してちょっと調子に乗ってしまいます。で、結局、再び赤字に転落し、挙げ句の果てには自己資本比率は10%を下回り、有利子負債は1兆円規模になってしまいます。で、従業員を人切りし、業績悪化の責任は仲の良くないボードメンバーに押しつけ、自身とそのお仲間(仲良し3人組)はちゃっかり残留します、メインバンクの傀儡として(まぁ、企業風土改革って一番難しいよね。一朝一夕できるわけがない)。
ついでにこの高橋社長が面白いのは、3千人超の希望退職者が会社を去った翌日に「人が重要だ」という内容の社長訓辞を出す正に目の付けどころが斜め上なセンスです。
創業者の早川徳次は社員を家族のように大切にしたと言い、「和は力なり、共に信じて結束を」を地でいく経営をしてきたようですが、現経営陣は部下や一般社員に詰め腹を切らせ、自身は銀行の言いなりになり保身に汲々としているようにしか見えません。一番無能なのは、破綻必死の状況になるまで無策であったトップ・マネジメントだというのに。

さて、ここまでシャープの転落ぶりをなぞってきて何か思い出しませんか?

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず。ただ春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。

平家物語の冒頭にそっくりじゃね?

ってオレは力強く思いました。

シャープと言えば、「目の付けどころが、シャープでしょ。」のスローガンが長らく使われてきましたが(2010年から「目指してる、未来がちがう。」に変わったけど)、ネットの世界では「目の付けどころが斜め上」などと揶揄されたりしています。だって、

デジタル複合機用プラズマクラスターイオン発生装置とか
「ともだち家電」シリーズとか
健康コックピットとか
極めつけは、ロボット型スマートフォン「RoBoHon」とか

誰がターゲットだよ?

って思いません?

シャープは、
経営危機によって独創的な家電商品を生み出す余裕が現場から消えた。
消費者ニーズを最優先して商品を開発するという良さがなくなった。
自由闊達さがなくなった。
なんて言われているようですが、斜め上ばかり見ているようでは経営再建は夢のまた夢でしょう。

結局はあだ花だった液晶事業のかりそめの成功に浮かれ、
傲慢で不遜になり、
身の丈に合わない金の使い方をして、
失敗すると社内抗争に明け暮れて、
責任は部下にとらせ、
今までのツケが回ってきて、誰も助けてくれないとか
シャープの凋落は必然だったんじゃね?って思います。最終赤字が2500億になって債務超過になりそうだとか報道されてるけど、自業自得感でいっぱいです。

それでは最後にシャープの最も痛々しい話を一つ。
シャープのナンバー2のの長谷川祥典専務(コンシューマーエレクトロニクスカンパニー社長)は、シーテック(映像、情報、通信の国際展示会)でスティーブ•ジョブズのone more thingを真似してモバイル型ロボット電話RoBoHon(ロボホン)のプレゼンをしたそうです。実際見た訳じゃないけど、どんだけ罰ゲームなんだよって思いました。痛々し過ぎますよ。そもそも誰得なの?誰が欲しいの?税込みで20万超えてるんですけど。

ドリフのいかりや長介ばりに

ダメだこりゃ

と思う二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。

2016年4月30日土曜日

DMPU:その傾向と対策

話題になったのはだいぶ前ですが、関ジャニ∞の大倉くんのお父さんが社長だっていうんで、どんなものかと帰り道に寄り道して鳥貴族に行ってきました(相当遅れてるね、オレ)。

鳥貴族ってあまり良く知らなかったんですが、280円(税抜)均一とジャンボ焼鳥をウリにしてるらしいですね。

まずは、実地レポート↓

-ザ•プレミアム•モルツ 400 ml (302 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
普通に旨かったね

-ホルモンねぎ盛ポン酢 (302 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
「ハートと肝を繋いでいる希少部位と、砂ずりの皮をボイルし、あっさりポン酢とネギをたっぷるかけた」という一品。
キュキュッとプリキュッとした食感が楽しい。冷製なので味が閉じている感じで味が"カタイ"印象。でも、まあ、旨いです。ポン酢との相性が抜群なので、よく掻き混ぜて食すべし。けっこう硬派で淡白な味。多分、軽く火で炙って食べた方が美味しいかも。

-モモ貴族焼 (塩) (302 JPY)-
-RATING- ★★☆☆☆
-REVIEW-
もも肉と白ネギを交互に刺し、オリジナルの天然塩で焼き上げたという品。
もも肉がジューシーで食感良く肉自体の味も良い。ネギも悪くない。但し、とても塩辛い。シャープな塩味が強過ぎる。ミネラル系の味が感じられなかった。純粋に塩の振り過ぎで、料理を台無しにしている。

-きもたれ (302 JPY)-
-RATING- ★☆☆☆☆
-REVIEW-
レバーの食感は僅かにプリプリ感が残っていて悪くないが、味というか香味が良くない。口の中に嫌な臭みがいつまでも残る。
さらに、レバーのbodyの強さに対してタレの強さと量が圧倒的に不足している。

-むね肉明太子マヨネーズ焼-
-RATING- ★☆☆☆☆
-REVIEW-
国産魚卵を使用した一品。
明太子マヨネーズは普通に旨いが、むね肉はパサパサした食感で味気ない。

全体の印象は、ホルモンねぎ盛ポン酢以外の焼鳥メニューはボリュームがあり、四十路のボク的にはかなりお腹いっぱいになりました。焼鳥2本で302円(税込み)というプライシングは、一見すると高いと感じるかもしれないけど、1本当たりのボリュームがデカいです。
クリンリネスと接客はかなり良い。(ボクが今回行った店の)店内のレイアウトが面白くてけっこう機能的で、半分煙といった感じ。
良心的な店だとは思うけど、調理技術が残念。(多分バイトの)焼き担当の若者が自信満々で焼鳥に塩を振りながら焼いてるのが見えたんだけど、その味付け塩辛過ぎるから。素材の良さを完全に消してしまってるとボクは思いましたね。まあ、普通のチェーン居酒屋なのでしょう。ボク的にはビールはかなりお得で、ホルモンねぎ盛ポン酢は及第。塩加減さえ良ければモモ貴族焼はそれなりにいい線いってると思いました。商品を適切にセレクトすれば何回か足を運んでもいいかなと思える店と感じました。

因に、鳥貴族でコスパの高いメニューベスト3はこちらになります↓

1位   ビール
2位   もも貴族焼
3位   鳥かまめし

それから、280円均一の鳥貴族の焼き鳥の原価は、

ネギマ/ 170円
レバー/ 60円
皮/ 30円
つくね/ 110円

のようです。
焼き鳥屋さんで注文するときの参考にしてみましょう。
(see http://ameblo.jp/eatnyan/entry-10879871311.html)


閑話休題


こんな古い文献を読んでみました↓

Substitution of HMPT by the Cyclic Urea DMPU as a Cosolvent for Highly Reactive Nucleophiles and Bases
Helvetica Chimica Acta, 1982, 65, 385-391.

大分古い文献を読んでみました。


DMPU (N,N'-dimethyl-N,N'-propyleneurea, 1,3-dimethyl-2-oxohexahydropyrimidine)のお話です。

HMPA (or HMPT = Hexamethylphosphoric Triamide)は強烈な配位能を有する非プロトン性極性溶媒として広く知られており、その溶媒効果によって(主に)有機リチウム試薬の反応性を向上させたり、選択性に影響を及ぼしたりすることが教科書等にも記載されています(有機金属化合物の会合状態を変える)。

HMPAの共溶媒としての機能が優れていることは周知のことと思いますが、それと同時に発癌性が疑われている物質としても有名で、HMPA様の効果を狙いたい場合はまず代替溶媒をチョイスするのが基本と思います。そして、代替溶媒としてはやはりDMPUが最右翼でしょう。ということで、今回はHMPAとDMPUの物性やそれらをco-solventに用いた場合の反応の収率や選択性に係る比較を行っている論文をメモします。

まず、DMPUの基本的性質ですが、みんな分かってると思うけど、吸湿性で水と任意の割合で混合します。DMPUを含有する炭化水素やエーテル溶液からは水洗でDMPUを取り除くことができますが、CHCl3やCH2Cl2といったハロゲン系の溶媒はDMPUを良く溶かし、15%のDMPU水溶液を三回抽出すると80-90%のDMPUを回収することができるって書いてあります(随分とザックリだなぁ)。

DMPUとHMPTの物性の比較はこちら↓


両者の物性はなかなか良く似通っています。ちなみに、DMPUの5員環のアナローグであるDMEU (N,N'-dimethyl-N,N'-ethylene urea, 1,3-dimethyl-2-imidazolidinone)もHMPA様の効果があるんだけど、DMEUの溶解性がイマイチなために低温での使用には向きません。DMEU:THF=1:2の混合溶媒は-30˚Cを下回るとDMEUが析出してきます。

一方、DMPU:THF=1:2混合溶媒では-90˚Cでも均一で、-78˚C以下の反応条件下でDMPUが析出することはまずないそうです。さらに、低温(-90˚Cとか-78˚Cとか)ではn-BuLiとの反応は極めて遅く、DMPUより反応性の高い基質が系内に存在していれば、DMPUはそれとn-BuLiとの目的の反応を阻害しません。THF/DMPU=2:1の混合溶媒中、-35˚Cでin situでLDAを調製することも普通にできて、生成したLDAも-78˚Cから-35˚Cの範囲で少なくとも3時間は安定です。

それでは次に各種反応における溶媒効果をみてみましょう↓








HMPA、DMPUともに試薬量(数eq.)の添加でも劇的な選択性の変化を誘起する効果もあるけど、十分な効果を得るためには通常20-30%程度の添加が必要なようです。あと、一般的にDMPUでHMPAと同等の効果を得るためには、幾分多めのDMPUの添加が必要となります。

オレも有機リチウム試薬を使った反応でDMPU入れてみたことあるけど、劇的に反応性が変わって驚いたことがあります。まさに、

困ったときのDMPU頼み

以上、二流大出のDMPUメモでした。


2016年3月22日火曜日

TMSジアゾメタンの話 (Büchner–Curtius–Schlotterbeck reaction)

アキバで食べた担々麺のメモです。


-神田担々麺・陳麻婆豆腐 雲林坊 秋葉原店
「汁あり担々麺」 (830 JPY) memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
麺は細麺でやんわりwaveがかっている。で、この麺が旨い。自然な感じの食感(日本のラーメンの麺の味と食感)で、小麦の旨さがにじみ出てくるような感覚。
スープは日本人仕様と思われるマイルドな味に整えられている。山椒の香味が心地よく舌を刺激して、清涼感を感じさせる。マイルドな辛旨で、胡麻の良い香味がとってもgood!非の打ちどころが見当たらない。
具は、ネギ、もやし、ニラ(?)、挽肉。
山椒の効かせ方が秀逸。


閑話休題


今回はTMSジアゾメタンに関するTipsです。


TMSジアゾメタンは、中性条件下、非常にマイルドかつ迅速にカルボン酸の選択的O-メチル化剤が可能で、ほとんどの官能基に影響を与えないとされています。なので、概して不安定な官能基が共存するかるカルボン酸のメチルエステル化をする際に実験室で多用されているのではないでしょうか。

不安定な官能基と言われて思い浮かぶ官能基の一つにホルミル基があると思います。で、ホルミル基を有するカルボン酸をメチルエステル化する場合、ファーストチョイスとしてTMSジアゾメタンをセレクトしたくなる気持ちでいっぱいになるかもしれません。

が、多分うまく行きません。

というのも、ジアゾメタンがホルミル基やカルボニル基ともマイルドな条件で反応するからです↓
Organic Reactions, 1954, 11, 57.
(Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, Diazomethane)

J. Org. Chem., 1979, 44, 4064.
(Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, Diazomethane)



ちなみにこの反応、Büchner–Curtius–Schlotterbeck reactionっていうらしいです。


TMSジアゾメタンでも反応します↓

塩入先生の報告↓

Heterocycles, 1981, 15, 975-979.

ということで、ホルミル基を有するカルボン酸のメチルエステル化を試みると結果はこうなります(実際、以前経験した)↓



気をつけよう 
ジアゾメタンと 
カルボニル

二流代出のテクニシャン(研究補助員)のTMSジアゾメタンの話でした。



2016年2月14日日曜日

日本のエレキ (10年後、生き残る理系の条件)

ども、艦これ2016冬イベントE-1 ボスマスで矢矧がドロップしたオタッキーのコンキチです(海風もドロップした)。

北千住の立ち呑み割烹のお店のメモです↓

-割烹くずし 徳多和良 memo-

-吉乃川 吟醸三年古酒 (500 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
雪冷。上品な老香がたまらなく良い匂い。綺麗な味。finishに苦み。基本的に淡麗辛口で濃厚bodyのお酒(なんだと思う)。

-しめさば (300 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
薄く切り出された刺身に酢の香味は感じられない。とても軟らかくて、口に含むと適度の脂と強烈な旨さが伝わってくる。とても可愛らしい味で凄く旨い。あと、薬味は本山葵。

-エビス 生ビール グラス (300 JPY)-

-エシャレット土佐煮 (300 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
灰汁っぽさが全くない。もの凄く上品な味付け。こんなに上品な味のエシャレットがあっていいの?と思う逸品。

-あん肝 (300 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
淡白で、甘くて、上品で、濃密な味わい。プリンのような滑らかな舌触りで、どうしていいか分からないくらい旨い。一瞬チーズを想起させるような味。あっさりしていて、非常に滋味深く、mild taste。

-たちばなの蔵 純米 (500 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
雪冷。香り立ちは殆どしない。淡麗辛口の中に僅かに上品で優しい甘みが漂う(これがいい)。変なクセが無く、多分、大概の料理に凄く良く合うと思う。

-さより天ぷら (300 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
アツアツ。白身の旨さが怒涛の勢いで押し寄せてくる。抹茶塩でいただく。

-春霞 (500 JPY)-
-RATING- ★★★☆☆
-REVIEW-
雪冷。sharpなalcoholicな香りが微弱に香る。味わいもaharpだが、穏やかで上品な甘みと弱いmilky tasteを感じる。一言で言うと、スレンダーな甘さが特徴的。

-えぼ鯛の昆布じめ (300 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
皮付きの切身に、山葵、菊の花、つま、紫蘇が添えられて提供される。お刺身は凄く繊細な味。野趣的な"魚の味"に加えて、仄かな甘み(白身の焼き魚の見られるような甘み)、淡白な滋味、昆布締めによるものだろうかヌルっとした感触を感じる。総じて、とても可愛らしい味だ。
薬味の山葵自体は旨いが、無造作に刺身につけて食べると、折角の繊細な味が消されてしまうので、山葵はつけてもその量を極少量に抑えるべき。また、醤油もつけ過ぎると、醤油の味にえぼ鯛の繊細な味が掻き消されてしまうので注意。っていうか、何もつけずにそのまま食べた方がいいかも(充分美味しい)。菊の花を乗せて、ほんのちょっぴり醤油をつけて食べるのがお洒落だと思う。

-スパークリングワイン (白) (300 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
キリッと締まった硬派な香り。tasteは締まっているが、ちょっと甘い(明確に「甘口」という甘さではない。甘ったるいわけでもない)。
特筆すべきは、あんきもとのマリアージュで、とても素晴らしい。

-島らっきょう (300 JPY)-
-RATING- ★★★★☆
-REVIEW-
もろみ味噌が添えられている。島らっきょうは瑞々しさはあまり無いが、少し鄙びた感じの味が郷愁を誘う。で、脇に添えられている"もろみ味噌"が秀逸。色調は赤みが強い。tasteは、甘くて、もろみ-like(そのまま)な香味と味噌っぽい(そのまま)ニュアンス(でも、味噌感はあまり強くなく、むしろ弱め)のlightかつ玄妙な味(アンビバレント)。もろみ味噌に含まれるあずき色の粒々は、口の中で簡単に潰れ、食感も小豆ライク。
多分、島らっきょうの"鄙びた感"が"もろみ味噌"を引き立てているのではないかと思う。"もろみ味噌"の旨さを味わう為の料理と思いました。

-新竹の子の天ぷら (400 JPY)-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
凄くアツアツの状態(揚げたて)で提供される。抹茶塩でいただく。竹の子がてっても旨い。シャキシャキしていて、軟らかくて、甘くてjuicy。
衣はpopな感じの軽やかな油のtasteがしてとっても旨い(天ぷらの衣はあまり掻き混ぜていなかった)。

このお店、凄く狭いんだけど、お店の人達の動きに無駄がなくて、狭いスペースながら、コンパクトな動きでうまく回していると思いました。何度でも通いたい店と思いました。


閑話休題


中央大の竹内先生が書いた「10年後、生き残る理系の条件」を読了しました。

結論から言うと、

もの凄くまっとうなことが書いてある本

と思うとともに、

日本のエスタブリッシュメントに対して再び暗澹な気持ちになりました(再認識)。

ボク的には、

是非、読むべし(特に若い人)

と思いました。


さて、まっとうな理系の処世術(心構え)については竹内先生の本を熟読していただくとして、以下、エレキに疎い全くの畑違いのケミストが本書を読んで感じたエレキ業界の印象などを中心にメモしていきます。

ここ数年、我が国のエレキメーカーの凋落っぷりがしきりに囁かれていることと思います。大手家電メーカーの人切りリストラや事業売却(restructuring)の話題に耳が倦みきっていましたが、最近では唯一の勝ち組エレキと思っていた東芝の粉飾決算不適切会計が止めを刺したような気持ちで一杯でした。

いち素人の表層を軽く嘗めただけの感想を述べると、「軽電は最早コモディティ、終わったな」です。

しかし、そんないち素人の感想は間違いであることが本書を読んで分かりました。確かに、テレビやパソコンのコモディティ感が半端ないのは社会のコンセンサスかと思いますが、東芝のフラッシュメモリ(SSD)やソニーのイメージセンサは現在にあってなお充分な競争力を保持しているそうです。

いち一般人のボクは完璧に誤解していたけど、半導体は今でも成長産業であるそうです。半導体は設備投資型産業でその製造のほとんどが自動化されていてることに加えて、世界的に見て日本のエンジニアの給料は安いほうだそうです。即ち、P/Lに占める人件費は軽微。よって、半導体を日本でできない理由は、コスト面では、全くないのだそうです。実際、半導体の多くが先進国のアメリカに牛耳られているそうです(インテル、クアルコムとか)。ついでに、ビッグデータを蓄えるストレージ産業(要はSSDでしょ)もこれから成長が見込まれるのだとか。
(因みに、半導体の世界トップ10には米国企業が5社、韓国企業が2社、日本企業は東芝1社のみランクイン)。

こういった現実から導きだされる国内エレキの凋落の原因に対する答えは一つで、要は

やり方がまずい

んでしょう。


例えば、東芝勤務時代(10年くらい前)の竹内先生は、SSDに搭載されるメモリコントローラーの開発を国内システムLSIメーカーに働きかけていたそうですが、市場が小さいからとどこのメーカーにも断られます(正にイノベーションのジレンマ)。しかし、インターネットサービスやクラウド・コンピューティングの進展によって、今では大きな市場に成長しているそうです(インテル、マーベル、LSIといった海外メーカーが早期参入した)。

それから、日本のシステムLSI事業は失敗の典型例だと竹内先生は仰ります。アメリカ企業などの先行企業がはじめた事業がうまくいきそうになると、競って参入するも、先行企業を追い越せる技術も事業をまわすためのエコシステムも作れずに、最後は皆で撤退するって感じらしいです(確固たる戦略もなしにレッド・オーシャンに突っ込んで行く。正に、バカ丸出し)。

さらに、竹内先生が開発に携わったフラッシュメモリ事業でも、事業が立ち上がり始めると、それまでは「できっこない」と言っていた人達が手のひらを返して参入してきたそうです。そして、そんな流行にのって参入してくる人達はそのうち負けて撤退し、「日本の半導体はダメだ」と嘯くのだそうです。未だにフラッシュメモリは日本が強いというのにです。

ついでに、2012年に会社更生法の適用申請して、米マイクロン・テクノロジーの子会社になった旧エルビーダメモリは、マイクロン・テクノロジーの急成長の原動力になったそうです(これはDRAM市場がV字回復したため。竹内先生もDRAM市場のV時回復は予想できなかったそうです)。
(エルビーダメモリは、もともとはNECと日立製作所が1999年に設立したNEC日立メモリで、2003年の三菱電機からDRAM事業を譲り受けた)

挙げ句の果てに、国内自動車メーカーの技術開発幹部からは、「もう日本の電機メーカーには何も期待していません。うちはシリコンバレーでやります」と言い出される始末です(最近の話のようです)。

あと、本書では不採算事業(テレビ、パソコン、半導体、携帯電話、液晶パネル、etc.)を切り離して、重電(電力、社会インフラ事業)に軸足を移すことで復活を遂げた日立製作所が、ある種の成功事例のように取り上げられていますが、日立のこれまでの経営方針を鑑みると相当擦った揉んだがあったと推察されます。だって、2008-2009年頃の日立の経営者は、「脱"選択と集中"」とか「コングロマリット・プレミアム」とかアホなことぬかして、W不採算事業の「ハードディスク事業」と「薄型テレビ事業」を中核と位置づけて大赤字垂れ流してたからね。
see
http://researcher-station.blogspot.jp/2008/05/blog-post_30.html
http://researcher-station.blogspot.jp/2009/01/2_31.html


どうでもいいけど、エレキメーカーの経営幹部は成長したくないの?って思ってしまいます。近年、国内エレキメーカーがイマイチな経営成績しか残せていないのは、不採算部門であっても、そこで働く従業員をそう簡単に切ることができず、彼等彼女等の働く場を確保しなければならないという事情もあるのかもしれませんが、経営者だったらそんなの言い訳にしてはいけないし、結局、「最後はリストラ人切りするんでしょ」って感じです。まあ、それ以前に戦略性が全く感じられないけどね。あと、「保身のためにリスクを犯さない=現状維持で余計なことはしない」っていう志向もあるのでしょう、きっと。


本書の終わりの方で、竹内先生は国内エレキメーカーの経営幹部に対してこう嘆いています↓

「失敗の原因を作った人が、若い現場の人をリストラする一方、自分は失敗の責任を取らずに担当事業を変えて組織の中の生き残り、意思決定者となる.....」

「(竹内先生が)日本の半導体がダメなわけではなく、エレクトロニクスが日本人に向いていないのではなく、単にやり方が悪かっただけ」と主張すると、先輩方からお叱りをうけ、時には反発は感情的で、最後は「竹内は生意気だ」くらいで終わることこもあるそうです。

さらに竹内先生は、「やり方を変えるとうのは、意思決定者を変えるということですから、今責任のある立場の方にとっては自分の立場が危うくなるということ」とも述べています。

瀧本哲史氏は自身の著作「君に友だちはいらない」の中で、『大きな世の中のパラダイム・シフトというのは。「世代交代が引き起こす」』、『古いパラダイムを信じている前の世代を説得して意見を変えさせるのは不可能であるし、それに労力を注ぐのは時間の無駄』と述べていますが、古いパラダイムを信じている国内エレキメーカー経営幹部(古くさいエスタブリッシュメント)にも同様のことが適用できそうな気がします。

竹内先生の本はエレキ分野について書かれていますが、竹内先生がエレキ分野に対して感じる憂いは日本の他の分野にも多分に当てはまっているのではないでしょうか?『どこかの企業がはじめた事業がうまくいきそうになると、競って参入する』といったトレンドに乗るという業界内の横並び的な発想はどの業界でも枚挙に暇がないように思えます。結局は、どこも一緒だなと。


さて、社内政治で上手く立ち回り、リスクを回避することに心血を注いで幹部に昇り詰めた、脳ミソにカビが生えたようなおエラ方に幻滅する人もいらっしゃるかもしれませんが、STEM (Science, Technology, Engineering, Mathematics)系社畜の方々はそう悲観することはないと思います。だって、

科学者が仕えるのは会社でもなく、
上司でもなく、
サイエンス一択なんだから

そう考えると、社畜ライフが楽しくなってきませんか?下手にエラくなったって面倒な事務仕事と責任押し付けられるだけだし、サイエンスから離れていくだけですよ。だったら、そこそこいい給料で、科学に対して誠実に仕えて、日々の小さな発見に小さな喜びを感じていた方が幸せじゃありませんか?(そして、早く帰って旨いもの喰ったり、旨い酒呑んだりする)
それに、アホな上司に無駄に媚び諂う必要もなくなりますよ。だって、サイエンスに誠実に仕えることこそ唯一の絶対的正義なんだから。

なにはともあれ、STEM系社畜に幸あれ!!!

と思う二流大出のテクニシャン(研究補助員)の読書感想文でした。



2016年2月13日土曜日

カップリングでニトリルつっこんでみました (京都大学)

ども、艦これ2016冬イベントを終えた、オタッキーのコンキチです。


さて、久しぶりにおろしそばを食べたときのメモです↓

-流山すず季の辛味おろしそば (1,080 JPY) memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
心地よい弾力と安心感を醸す甘みのある細身の蕎麦は相変わらず旨い。bodyの強いツユに辛味大根を加えることで、深みのある辛さが蕎麦の味を引き立てる。まさに、甘辛の融合。それから、海苔がとても合う。山葵と海苔が合うのは有名だけど、辛味大根と海苔のマリアージュも鉄板の組合わせ。 ツユに大根を入れて、そこに蕎麦を絡めて啜るという所作は、山葵を薬味に使ったのではできないダイナミックな旨さを演出している。 最後にツユと辛味大根の残ったところに注いで飲む蕎麦湯は、奥行きのある味で旨いと思いました。


 閑話休題


こんな文献を読んでみました↓

Copper-Catalyzed Cyanation of Aryl- and Alkenylboronic Reagents with Cyanogen Iodide
Org. Lett., 2015, 17, 4670-4673.

京都大学の報告で、I-CN (cyanogen iodide)をCN源に使って、カップリングでニトリルを合成するお話です。

Ar-CNのコンベンショナルな合成法というと、ハロゲン化物やジアゾニウム塩と、CuCNとの反応(Rosenmund-von Braun反応、Sandmyer反応)や、遷移金属触媒を用いたCNアニオン等価体(求核的シアノ化試薬)との反応があります。

で、今回著者等がセレクトしたシアノ化剤は"I-CN (Cyanogen Iodide)"。一般的には求電子的シアノ化試薬と考えられていて、共酸化剤なしに反応の処せられるようです。

オレ、"I-CN (Cyanogen Iodide)"って初耳な化合物なんだけど、物性がこんな感じらしいです↓

・counter-attack reagent
・sublimes at 45˚C
・mp. 146.7˚C
d 2.84 g•cm-3
・highly toxic

これまでに、著者等はBr-CN (Cyanogen Bromide)とI-CN (Cyanogen Iodide)を用いた反応(Catalysis)の研究を行い、アルキンのブロモシアノ化、Friedel-Craftsタイプのaromatic cyanationを開発してきました。

(a) Bromocyanation of Alkynes

Chem. Commun., 2011, 47, 2375.

(b) Friedel-Crafts Type Aromatic Cyanation


Chem. Commun., 2012, 48, 3127.

(c) C-H Cyanation of Alkynes

Org. Lett., 2013, 15, 5810.

最近、アリールボロン酸誘導体をAr-CNへと変換する反応が注目されているそうで、反応開発が行われているそうですが、高価なロジウム触媒を用いたり、化学両論量の銅塩や銀塩を使用しなければならなかったりと、改善の余地が大いに有ると著者等は主張します。

ここで、This Workですが、前述したBr-CN (Cyanogen Bromide)とI-CN (Cyanogen Iodide)を使ったCatalysisの反応開発をベースに、著者等は銅が触媒する有機ボロン酸とI-CN (Cyanogen Iodide)とのカップルリング反応によるシアノ化反応を開発します。

This Work

ちなみに、I-CNは自前で調製していています(TCIやアルドで売ってない)↓


あと、この↓反応結果と、

時間経過に伴う原料と生成物の分配率の変化モニターすることによって推定した反応機構はこちら↓

官能基許容性は少しそそられることろも有るけど、I-CN (Cyanogen Iodide)の調製がけっこう煩雑と思います。ボク的にはちょっとないかな。

以上、二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。




2016年1月24日日曜日

LiICAってなによ?

らぁめん花月嵐で食べたラーメンのメモです。

-豚そば銀次郎 (700 JPY) memo-
-RATING- ★★★★★
-REVIEW-
麺はほぼストレートの中細麺でツルシコの食感。スープは豚骨と魚系の分かり易いダブルスープ(だと思う)。やや粘度を感じるも、基本、さらさらしたあっさり系、だけど味が薄いわけでわない。
スープは麺によく絡んでいるようには感じなかったが、物足りなさはない。麺自体に味付けしてあるような気がした。そして、麺の味をスープは盛り立てているといった印象のラーメン。
具は、玉子、チャーシュー、海苔、刻みネギ、刻み玉葱。
玉子は普通のゆで卵。
チャーシューは薄切りで非常に柔らかい。脂部は殆ど無く、悪くない味。
ネギ、玉葱のシャッキリ感が良いアクセント。
チェーン店でこのクオリティーは凄いと思う、驚いた。ただ、チャーシューの上に載せられた魚粉が魚くさくなるから邪魔。


閑話休題


相当古い文献を読んでみました↓

The Reaction of Lithium N-Isopropylcyclohexylamide with Ester. A Method for the Formation and Alkylation of Ester Enolates
J. Am. Chem. Soc., 1971, 93, 2318.

エステルのα-アルキル化をサーチしていたんですが、エステルのエノレートアニオンはケトンのそれと比べてかなり反応性が高く、ケテンが生成しがちだといいます。そのため、低温で反応を行ったり、反応性の低い求電子剤に使用を避けるといったことが必要となります。そんなカルボン酸エステルエノレートではありますが、tert-ブチルエステルの場合は室温でも安定なようです(メチルエステルやエチルエステルだと0℃以下で分解するようです)。

また、エステルエノレートはケテンへの分解という問題の他に、自己縮合(Claisen condensation)するという問題があります。自己縮合への対処法としては、LDAなどの強力な塩基の溶液中に基質(エステル)を加えていくことでエステルを即座にエノレートへと変換さえせことで、系内に余剰のエステルを存在させないようにすることが基本と思われますが(全部エノレートになればClaisen縮合は遅い)、tert-ブチルエステル(R=tert-Bu)を用いることでその嵩高さによってカルボニル基への求核攻撃を抑制するといった方法も有効です。

で、他に有効な方法ってないのかなぁと思っていたら、発見したのが今回メモする文献で、LiICA (Lithium N-IsopropylCyclohexylAmide)が有効だというお話です。


ちなみに、ethyl propionate, ethyl hexanoate, tert-butyl hexanoate, ethyl isobutylate, ethyl isovalerate, ethyl cyclohexanecarboxylate, ethyl phenylacetateをLiICAを使って-78℃でエステルをリチオ化すると、室温まで温度を上げても自己縮合は起こらないといいます(但し、0℃でリチオ化しようとすると自己縮合がかなり起こる)。


そして、室温、DMSO存在下(DMSO-THF, 20˚C)でエノレートの溶液をハロゲン化アルキルと反応させることで、高収率でα-アルキル化を行うこことができます。

ただ、酢酸エチルのように極めて活性の高いエノレートだと収率が低く、この原因はおそらく自己縮合がアルキル化と競合するためだと著者等は考えてます。


ちなみに、活性の低いlithio tert-butyl acetateとヨウ化ブチルをTHF中で反応させると60% Yieldですが、DMSOを添加して、50% excessのヨウ化ブチルを室温で作用させると85%まで収率が向上します。

最後にLiITAを用いたα-アルキル化の基質一般性はこんな感じ↓

tert-Butyl acetate + n-Butyl iodide/ 85%
tert-Butyl acetate + n-Butyl bromide/ 75%
tert-Butyl acetate + n-Octyl iodide/ 96%
tert-Butyl acetate + Isobutyl iodide/ 42%
tert-Butyl acetate + Isoamyl iodide/ 75%
tert-Butyl acetate + Allyl bromide/ 80%
tert-Butyl acetate + Benzyl Bromide/ 96%
tert-Butyl acetate + Isopropyl iodide/ 50%
tert-Butyl hexanoate + Methyl iodide/ 82%
Ethyl hexanoate + Methyl iodide/ 83%
Ethyl hexanoate + Isopropyl iodide/ 50%
Ethyl isobutyrate + Methyl iodide/ 87%


昔の論文であんまり詳しいことは書いてないんだけど、LDAやLiHMDSよりも有効アピールしてたので、これからはLiICAに注意を払って論文ウォッチしていこうと思う二流大出のテクニシャン(研究補助員)のメモでした。