(昨年)こんな文献を読んでみました↓
Hydrolysis of Phosphoryl Trichloride (POCl3): Characterization, in Situ Detection, and Safe Quenching of Energetic Metastable Intermediates
Org. Process Res. Dev., 2010, 14, 1490-1500.
多分、ボク達有機化学系実験化学者って、常にスマートな反応の設定を心がけていると思います。でも、人生必ずしも思った通りに事が進まないわけで、不本意ながら泥くさい力技的な反応条件をチョイスすることもあります(まあ、安全性、コスト、入手容易性、根本的の他の条件では無理等々色々理由はあると思います)。
ところで、POCl3を使った反応は、かなり過剰量のPOCl3を使用せざるを得ない(泥くさい条件)場合があり、かつ余剰のPOCl3の失活は、大きな発熱を伴い、その発熱が制御できなかった場合は内容物な吹き出してしまうこともあります(運が良いのか、ちゃんと気をつけているからか、ボクはまだない)。
で、本報のお題は、その「Safe Quenching」です↓
多分常法と呼ばれるクエンチ方法は、水を加えるというのが一般的かと思います。ところで、POCl3の加水分解はこんな感じにで↓テップワイズに進行します。
というわけで、POCl3を(大)過剰に使った反応液を水でクエンチすると、準安定なHPO2Cl2 (phosphorodichloridic acid)が系内に存在することにわるわけです(X-ray, 31P NMRで同定)。で、こいつがさらに加水分解を受ける過程で発熱し、それが蓄熱すると反応が一気に加速し吹いちゃったりするのでしょう。
著者等がインプルーブした反応例です↓
次、大量にPOCl3を使うことになったら、試してみようかなと思います。
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